荒昌史さん

暮らしのコミュニティは ゆるやかなつながりから 助け合いときずなが「まち」を育む

投稿者: カテゴリー: 暮らし環境・災害 オン 2022年7月5日

書影

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 2022年4月、英治出版より「ネイバーフッドデザイン まちを楽しみ、助け合う『暮らしのコミュニティ』のつくりかた」という本が出版された。著者は荒昌史さん。ひばりが丘団地地域のエリアマネジメントの中核を担った会社HITOTOWA INC.の代表取締役だ。
 「まちづくり」の専門家と言える荒さんは昨年秋よりひばりが丘に住んでいる。荒さんがひばりが丘を選んだ理由、暮らしてみて何を感じ、何を思うのか、話を聞いた。

 

 

「まち」で「ゆるやかにつながる」 言葉に隠された思いは

 

 前出の荒さんの著書の「はじめに」には、荒さんの考える「ネイバーフッドデザイン」の定義が書かれている。

 「つながりさえできればそれで完成」ではありません。私たちが考えるネイバーフッドデザインの定義は「同じまちに暮らす人々が、いざというときに助け合えるような関係性と仕組みをつくること」です。
 その関係性が、都市における地域課題、ひいては社会環境問題の解決につながってゆくこと。それが根幹です。

 この定義にも使われている「まち」という言葉。繰り返し本文にも出てくる。「町」でも「街」でもない。この点を尋ねると「ネイバーフッドデザインにおいては距離感が大切なんです。物理的な距離と心理的な距離があるのですが、物理的なちょうど良い距離感を表す適切な漢字がなかった。『町』も『街』もちがう気がして」「もう一つは『まち』と聞いた時にそれぞれの人がいろんな『まち』を思い浮かべられるといいかなと思って、平仮名にしました」と答えが返ってきた。

 

荒さん

ゆるやかなコミュニティを語る荒昌史さん(ひばりテラス118会議室)

 本の中では、具体的に自転車や徒歩で15分くらいの距離がいざという時に助け合える距離かと言っている。「日頃は近すぎない、ほどよい距離感で暮らしつつ、困った時は助け合えるようなゆるやかなコミュニティをネイバーフッドデザインを通し育んでいきたい」と語っている。

 「ゆるやかなつながり」という言葉も本の中で再三使われている。

 「暮らしのコミュニティは窮屈であってはいけない。ゆるやかなつながりの方が主体的に、一歩を踏み出しやすい。〇〇してみたい、〇〇できるかも、という思いがあふれたコミュニティになるには、つながり方はゆるやかな方が良いと思う」と話した。

 本の中にはHITOTOWAでデザインしたコミュニティで実際にあった事例がふんだんに紹介されている。小さなできごとがつながりを産み、ちょっとした困りごとを解決していく。誰かの大きな負担にすることなく、みんなで分担し、楽しみながら活動する。「ゆるやかなつながり」から助け合う関係性を築いていくこと、その人の暮らしが心豊かになっていく様がリポートされている。

 

「どんな思いを持った会社なのか」

 

 言葉についての話から、「HITOTOWA」という会社名についても尋ねてみた。本の奥付に「人と和のために仕事をし」と記されているが、他の意味も隠れていそうで、ついつい想像を巡らせ「人とは?」「人永遠」と挙げると「あ〜、それもあります。あと平和とか」と楽しそうに明かした。

 

 

 

荒昌史さん

人と向きあう、人に寄り添う、そんな思いを社名に託した

 「会社名は『何をする会社か』という事よりも『どんな思いを持った会社なのか』を体現するものにしたかった。ずっと環境問題に向きあってきたので、今度は人と向きあう仕事をしたいと思った」と語った。「どちらかというとシャイなんですけど」と少し恥ずかしそうに笑った。人と向きあう、人に寄り添う、そんな思いを社名に託し、創業11年が過ぎた今、少しずつ考え方も変化していると言う。

 「大きな成果を出すことが大切な場面もあったが、小さなことでもその人にとっては大きなこと。その人の人生がどう変わったか、ということが大切に思える。常に大振りするのではなく、一人一人の人生に寄り添うという思いで活動していきたいと思うようになった」と語った。

 

理想のまちで家を持ちたい

 

 UR都市機構が行なったひばりが丘団地の団地再生事業では、エリアマネジメントが導入された。事業パートナーとして決定した「大和ハウス工業」が中心となって、エリアマネジメント組織である「一般社団法人 まちにわ ひばりが丘」を設立し、その事務局業務を委託した先が「HITOTOWA INC. 」である。専門業者として5年間常駐し、住民が中心となってまちを育てていく基盤作りに大いに力を発揮した。

 荒さんが初めてひばりが丘を訪れたのは2013年の初夏。HITOTOWA創業から2年半が過ぎた頃だ。当時、社員は荒さん一人だったと聞いて驚いた。ひばりが丘団地は立て替えられていたが、新街区はほとんど更地の状態。まだマンションは1棟も建っていなかった。その日はとにかくまちを歩いたと言う。

 

荒昌史さん

「まち」の印象を語る荒さん

 

 「緑が多く、とても良い印象を持った。後にひばりが丘団地の自治会の皆さんと話をする中で、今までもしっかりとコミュニティづくりをされていたことも知り、求められている感じもしました」と話した。多くの場所でエリアマネジメントに携わる荒さんが、色々な場所を検討した末に、ひばりが丘に住むことになったのは出会いの好印象も一つの要素だったというこだ。

 

渡邉篤子さん

筆者の渡邉篤子さん

 

 「都心から15分程でこんなに自然に恵まれた場所はない、住むようになって『これから作ろうと思っても作れない環境』だと強く感じる」とも話した。緑が多いところ、落合川の自然、そして夜のひばりが丘の散歩も好きだという。「足りないことも勿論あるが、それはこれから作っていけば良いから」とこのまちを良くすることに意欲をのぞかせていた。

 荒さんが住んでいるのは東久留米市学園町。徒歩15分圏内にひばりヶ丘駅も東久留米駅もある。

「ちょうど島のように浮いた感じが面白い」と笑う。どちらでもないのが心地良さそうだ。「誰かがデザインした整い過ぎたまちでないところも気に入っている。学園町の人たちともつながりを持ち、まちの変遷にかかわっていきたい」と話した。

 

まちに溶け込む「コミュニティセンター」

 

 本の中では自分で野菜作りにも取り組んでいると書いてあるが、無人販売所や出張販売で地元のおいしい野菜を買えるのも魅力のひとつ、環境問題、社会問題にもつながっている、と話は熱を帯びてくる。きっと農家の人と話をしたり、昔からあるお店に行ったり、ネイバーフッドコミュニティを少しずつ築いているのだろうと想像した。

 「ひばりテラス118(まちにわ ひばりが丘が運営するコミュニティセンター)があるのも決め手の一つだった」と話した。実際荒さんはひばりテラス118の常連さんだ。ビジネスに、会議に、ご近所さんとの会合に、と頻繁に利用している。「コミュニティ作りにはこういう場所が必要」とデザインした場所を活用することは「作ったことがゴールではない。そこで豊かな暮らしが営まれなければ」という思いを、形にして見せてくれているようにも感じる。

 「東久留米のカフェで、ひばりテラスのことを話題にしている人たちがいた。すっかりまちに溶け込んでいる感じがする」と語る荒さん。うれしそうだった。自分がまち作りに関わった場所を見守るような思いもあるのだろうか?今度会ったら聞いてみたいと思った。
(渡邉篤子)(写真@northisland)

 

【関連情報】
・孤独・孤立の時代に、まちを楽しみ、助け合う。【出版記念対談vol.1 英治出版 高野達成氏 × HITOTOWA 荒昌史(前編)(後編)】(HITOTOWA
・まちにわひばりが丘(一般社団法人まちにわひばりが丘

渡邉篤子
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