柳橋保育園 旧園舎を彩ったステンドグラス、園児と共に新園舎にお引っ越し
西東京市新町1丁目の柳橋保育園は老朽化による建て替えを経て、2023年4月から新園舎での園児の受け入れが始まっている。2022年11月に旧園舎でお別れ会をした後、日々園児を見守り、送迎時には保護者を出迎えたステンドグラスの扉や照明はどうなったのか? 「生みの親」であるステンドグラス作家の酒井秀子さんと一緒に保育園の新園舎を訪れた。
インターフォンを押すと下原美奈子先生が笑顔で出迎えてくれた。施錠式の門扉を入ってすぐの玄関を見て、酒井先生が口元を押さえる。言葉にならない。旧園舎の玄関に使われていたステンドグラスが、まさに同じ玄関ドアにおさまっていた。「ああ、大切に、大切に、使ってくださっている!」
酒井先生は作品のパーツが組み合わされて、生まれ変わった玄関ドアをみて、我が子のような作品を、新園舎に受け継いでもらえたことに涙目に。また幾重もの複雑な工程を経て制作した数々のランプシェード作品が、新園舎のあちらこちらに飾られていた。美奈子先生の案内で新園舎を巡る間も、酒井先生の感激が絶えず伝わってきた。
玄関を入り突き当りを右に曲がると、旧園舎と錯覚するような廊下が現れた。壁は全面白木を使う案もあったが、ステンドグラスから漏れる光が映えるように、ガラスの設置個所は深い茶色を選んだという。新園舎設計の段階でステンドグラスを飾ることを念頭に設置場所などが計画されたと聞き、ステンドグラスを大切に思われ継承された北川和秀園長はじめ下原美奈子先生への感謝の気持ちが溢れた。
筆者の4人の子どもたちも柳橋保育園の卒園生だ。冬は陽も暮れて真っ暗になる午後7時、お迎えがまだで残っている園児はほんの数名。日中は賑やかな園も閉園間際の時間帯はシーンと静まりかえっている。会社から電車と自転車を乗り継いで1時間強の道のり、寒さと疲労感で下を向きがちな気持ちが、ステンドグラスから漏れる灯りでどれだけ慰められたことだろう。
二階のホールに続く階段の出窓にもステンドグラスが使われ、そのやわらかな光を浴びて園児が座れるようになっている。図書コーナーなど保育室以外にもホッとできる場所、ひとりになれる場所が確保されていた。
NHK番組「鑑賞マニュアル 美の壷」2009年7月10日に放映の「File 136 ガラスのランプ」の中で、酒井先生は次のように話している。「ガラスは色が何層にも重なり合っていますので、光を入れた時に、ガラスの中に眠っていたものが色々な色になって見えてきます。それが色の深みを出してくれます。」
その色の深みを出すガラスは、酒井先生がヨーロッパから直接輸入されたもの。今となってはもう手に入らない貴重なガラスであることを知った。季節や天候の変化によって陽の差しこむ角度や強さが変わり、表情が変わるガラス。複雑で深みのある色合いに囲まれた園児らの生活が羨ましく感じた。
現在建設が進む保育園隣に建つ特別養護老人ホームには、旧緑寿園の窓を飾っていた大型ステンドグラスが設置されるという。2025年10月開設の予定。こちらのお披露目も今から楽しみだ。保育園の園児、保育士、保護者、介護施設の利用者とそして職員らに、これからも長く愛でられていくステンドグラス。時に見る者をうっとりさせ、時に気持ちを和ませ、時に痛みや悲しみを癒し、時に寄り添い励ましてくれるであろう作品が、住処を変えても受け継がれ残っていくことがなにより嬉しい。
【関連情報】
・柳橋保育園(HP)
・慣れ親しんだ木造の園舎を見送る 柳橋保育園、建て替えでお別れ見学会(ひばりタイムス、2023年2月20日掲載)
- 地域に根差した活動を支える人々―興味・関心のあるところから - 2023年12月30日
- 武蔵野市、旧赤星鉄馬邸を一般公開 利活用プロジェクトの検討進む - 2023年12月26日
- サルバドール・ダリの世界に浸る 角川武蔵野ミュージアムで体感型ダリ展始まる - 2023年12月24日