パラアート展覧会

「パラアート展覧会」と「アートみーる」がコラボ企画 障害者らの作品を「よく・みて・はなそう」

投稿者: カテゴリー: 文化 オン 2023年12月18日

 西東京市の「対話による美術鑑賞」事業の市民ボランティア「アートみーる」が12月2日、鑑賞者と一緒に展示作品を巡る企画「みーるとコラボ!よく・みて・はなそうパラアート」を開催した。障害のある人たちの制作作品などを集めた「パラアート展覧会」を対象にした企画で、チームメンバーの筆者もファシリテータとして参加し、会場となった同市文化交流施設「コール田無」で、鑑賞者とともに展示作品を見て回った。

 パラアート展覧会は、制作ワークショップに参加する障害者らの作品のほか、一般公募作品も併せて展示。2018年から始まり、コロナ禍で2020年に中止したほか毎年開催してきた。5回目の今年は130点以上の作品が集まった。多摩北部都市広域都市行政圏協議会(東久留米市、清瀬市、東村山市、小平市、西東京市の5市で構成)の「多摩六都フェア」の一環として開くため、ワークショップ参加者は圏域から集まり、作品は10月31日から12月3日にかけて各市を巡回し、最後の展示が西東京市だった。

 

パラアート展覧会

西東京市コール田無での展示の様子(第1回と第2回のパラアート制作ワークショップで制作された作品が並ぶ)

パラアート展覧会

じっくり作品をみてまわる参加者

 

 「みーるとコラボ!よく・みて・はなそうパラアート」の企画段階で、パラアート展覧会に先立ち行われた4回のパラアート制作ワークショップの最後の回、大西健太郎さんの「手レよむダンス」を見学した。話をすることが難しい子どもたちともコミュニケーションを取りながら、「まる」や「世界で一番長い線」などを描き、ダンスや踊りにつなげていくワークだった。ことばに頼りすぎないコミュニケーションのやりとりは大変参考になった。

 

パラアート展覧会 パラアート展覧会

 

 同時に、パラアート展覧会で、どんな対話型鑑賞にするのか、なにを鑑賞者に持ち帰ってもらうのか、目的は何か? など、多くの課題が浮上した。障害者アートに対する考え方や、そもそも障害者という言葉の定義もさまざまで、アートみーるのメンバー内でも戸惑いもあった。話し合いの結果、「パラアート」を通して、来場者に障害者のアート活動や作品に触れてもらうこと、知ってもらうことに目標を定めた。

 

 

 ファシリテーターとして心がけたのは、一緒に作品をみて、参加者の話をよく聞くこと。作品から感じたことや思ったことを丁寧に言葉にしてみること。言葉にできないものも一緒に味わってみること。そして、それぞれの参加者が感じたものに寄り添うこと。

 当日は、小学生から年配まで幅広い年齢層の方がたが来館。展覧会に行く機会もなく絵画作品も見ないという方や、お友達から紹介されて参加した方と一緒に回った。それぞれが気になる作品や気に入った作品について、感想や疑問などを話しながら鑑賞した。

 

パラアート展覧会

見知らぬ同士のグループで回るので、まずは自己紹介から

 

 一人で回われば、気に留めなかった作品や見逃してしまう作品について、他の鑑賞者の感想を聞いて、対話することの楽しさをみんなで味わった。前日都内の美術館の展示に出かけたという参加者が、「絵をみることの楽しさは、有名作家であっても、無名の描き手の作品であっても同じだという発見があった」と言われたことが印象に残った。

 

パラアート展覧会

 

 数字で埋め尽くされた画面、画面の真ん中に描かれた電車、家族、お店屋さん、いつも行く施設の職員さん、海、ポケモン、怪獣、街、物語…すみずみまで丁寧に塗りこまれた色、余白、構成など見どころ満載で、どの作品からも並々ならぬパワーが伝わってきた。

 

パラアート展覧会

 

 上手く描こうとか、鑑賞者を驚かせてやろうなんて気持ちではなく、それぞれの描き手が描きたいことを懸命に描いている。そんな作品から発せられるパワーは圧倒的だ。

 企画リーダーの発案で、作品を出展した障害者の方々に、参加者の感想を届けることになった。大きめの吹き出し型に切られた紙に書いた感想はたくさん集まった。

 

パラアート展覧会

参加者からの出展者へのメッセージ

 

 パラアート展覧会では、制作者の状況や背景を想像し切なくなったり苦しくなったりもした。しかし、辛いから、悲しいから、どう関わったらいいのかわからないから…じゃ、すすまない。人はそれぞれに困りごとを抱えているし、いつ自分も障害者になるかもしれない。健常者と障害者という二項対立ではないはず。

 

パラアート展覧会

 

 もしそこに心理的な境界線や断絶があるなら…その境界線を緩ませたり、滲ませたり、混ぜ合わせたり、えいやっと小さな橋をかけてみたり、限界と思われる領域をほんの少しでも広げられたら、と感じた展覧会だった。

 参加者の方々も、どこまで踏み込んで良いものかと思案する人、かるく超えちゃう人、障害について考えるよりも作品そのものと向き合う人、さまざまだった。どちらが良い悪いではなく、それぞれが感じたり考えたりしたことを持ち帰ってもらえたら一緒に対話できた私たちもうれしい。

 今回のパラアート展覧会での関わりは、私たち自身も障害について考えるきっかけとなった。アートに正解はない。生きることも、正解が一つではない問いに向き合い、考え続け、行動することの繰り返しだ。あらためてアートみーるとして自分たちの活動の意義にも注目できた機会となった。

 

パラアート展覧会

第3回パラアート制作ワークショップ:「デザインユニットと作る巨大作品」で制作された作品

(卯野右子)

 

【関連情報】
・西東京多摩六都フェア(西東京市web

 

 

卯野右子
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